地方病教育推進研究会事務局です。
今回から表題にあるように大岡昇平の大著「レイテ戦記」と地方病の関わりについて記したいと思います。
大岡昇平は、多くの文学作品を残しています。中でも、「俘虜記」、「野火」そして「レイテ戦記」は、戦記小説3部作と呼ばれています。
「俘虜記」や「野火」は、作者自身の体験に基づく作品であると言われていますが、「レイテ戦記」は、作者の取材に基づく歴史の掘り起こしとも言うべき記録作品です。
レイテ戦記は、文庫版(中央文庫)で全3巻、およそ1350ページにも及ぶ大変読み応えのある大著です。
文芸評論家の菅野昭正氏は、解説の中で「日本軍8万4千人、アメリカ軍4千人という膨大な犠牲者の血を流し、太平洋戦争のもっとも過酷な戦場となったレイテ島の戦闘の経過が、ここに瞠目すべき詳密さで書き尽くされている。(省略)集めた膨大な資料を大岡氏は、慎重に検討しながら、正確な事実を合理的に推論し判断するのである。
下巻P391
レイテ戦記の中には、作者大岡氏の信念を垣間見る記述があります。
「すべて大東亜戦について、旧軍人の書いた戦史及び回想は、作為を加えられたものであることを忘れてはならない。それは旧軍人の恥を隠し、個人的プライドを傷つけないように配慮された歴史である。さらに戦後25年、現代日本を軍国主義への傾斜によって、味つけされている。
上巻P257
この大著「レイテ戦記」の中には、甲府第49連隊の玉砕を始めとする日本軍の敗走を詳述しています。しかし、おそらく兵士が罹患していただろう地方病(日本住血吸虫病)の記載がどこにもない。と林正高先生は指摘されています。
地方病(地方病史)研究を進める上で、この「レイテ戦記」は、事務局長の私にとって避けては通れない作品です。
次回以降、レイテ戦記の著者大岡昇平氏と林正高先生の関わりについて紹介したいと思います。
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地方病教育推進研究会 事務局長